“花の都”のイタリアワイン

皆さんこんにちは。銀座クラブチック、ソムリエの鈴木です。

イタリアワイン編の第３話となる今回は、イタリアを代表する２大生産地のピエモンテ州と並ぶ高品質なワイン産地のトスカーナ州です。

ピサの斜塔、ミケランジェロのダビデ像、メディチ家など、ルネサンス時代の芸術作品や建築が多く見られる、歴史・芸術・食と尽きる事の無い魅力満載の地域で、“花の都”フィレンツェが州都です。

南北に細長いイタリアの中部に位置していて、山岳地帯が25％、丘陵地帯が67％で、内陸部は寒暖の差が激しい大陸的気候ですが、海岸寄りは夏は涼しく、冬は温暖で安定した気候に恵まれ、赤ワインの生産が８割以上を占めます。

このトスカーナを代表するワインと言えば、伝統ある“サンジョヴェーゼ”種のワインと1970年代に登場した“スーパータスカン”ですが、今回はサンジョヴェーゼに焦点を当てていきたいと思います。

世界中で広く親しまれている「キャンティ」「キャンティ・クラシコ」「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」は、どれもメインとなるぶどう品種はサンジョヴェーゼですが、実はこのぶどう品種は、非常に繊細で突然変異を起こしやすいため、果皮の色の違い、粒の大きさの違いなどを含めて実に88種ものクローン（亜種）があると言われていて、それぞれの亜種が土地の特徴を反映させ非常にバラエティ豊かなワインとなります。

クローンは大きく分けて“サンジョヴェーゼ・ピッコロ”の系統と、“サンジョヴェーゼ・グロッソ”の系統に分かれます。

キャンティ地区の葡萄は「サンジョヴェーゼ・ピッコロ」。

ピッコロ（＝小さい）の名の通り、粒が小さい品種で、豊かな果実味と酸味、わずかな青みを含んだタンニンが特徴で、ベリーやスミレの香り、フレッシュな果実味と酸味があり、ふくよかで飲みやすいミディアムボディのワインとなります。

「キャンティ」は、白ぶどうを0〜20％まで混醸することが認められていることもあり、世界で一番バリエーションのあるワインとも言われていますので一括りにするのは少し乱暴ですが、フレッシュな果実味と酸味は、生ハムやトマト料理、肉料理など軽めの洋食におすすめです。

そのキャンティよりも厳しい規定で造られる「キャンティ・クラシコ」は、より限られた地区のぶどうを使用して、酸味と甘味のバランスが取れた上質で滑らかなタンニンを楽しめる、端正で味わい深いワインとなります。

長期熟成を義務付けた上位格付けの「キャンティ・クラシコ・レゼルヴァ」、さらに最高位のカテゴリーとして2014年に誕生した「キャンティ・クラシコ・グラン・セレツィオーネ」は、クランベリーやプラム、リコリス、ハーブ、赤い果実を思わせ、じっくり煮込んだトマトソースを使った料理や、ローストした肉料理、さらには醤油、味噌、出汁といった和食の穏やかな香りと風味にも寄り添うため、焼肉やもつ煮込み、かぼちゃの煮物などとも相性が良い、数少ない赤ワインのひとつです。

そして、イタリアワイン最高峰のひとつである「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。

この地区の葡萄は、“サンジョヴェーゼ・グロッソ”。

地元では“ブルネッロ”とも呼ばれますが、グロッソ（＝大きい）の名の通り、ピッコロに比べて粒が大きく皮が厚いため、より果実味が豊かで、きめ細かいタンニンとしっかりとした凝縮感があり、熟成させることで重厚な香りをまといます。

熟成したチーズ、赤身肉や野鳥などと合わせるとワインの優雅な香りが肉の旨味をさらに引き出してくれます。

シンプルでカジュアルなイタリア料理から肉料理、醤油などを使った和食や焼肉まで楽しめるトスカーナの伝統ワインに皆さんもぜひ気軽に挑戦してみて下さい！