チーズについて
六本木クラブチック
ソムリエ 平野 光志
先日、あるレストランでワインを飲んでいました。
隣のテーブルに家族連れがいらっしゃいます。
10歳ぐらいの女の子でしょうか・・・、「ねえパパ、このチーズ腐ってるよ!」と言っています。
お父さんは「このチーズはこういうチーズなんだよ」と。
私はチラッとそのチーズを見ました。
ロックフォールです。ブルーチーズの代表ですね。
確かにブルーチーズは見た目に穴があいて、そこに青緑色のカビが見えます。
知らない子供にとっても「何!?」と思う代表的なチーズでしょう。
私も小学生の頃、初めて見た時は腐っていると思ってましたから・・・。(笑)
今となってはもちろん美味しく頂いていますが、現在のチーズは殺菌済みの乳で作られており、もとから存在していた微生物は死滅しています。
それを乗り越えてきたカビの中で、もっとも広く使われているのがペニシリウム属のカビです。
強い味のするチーズに青い模様を作り出しているカビで、きわめて安全です。
古くからあるロックフォールの青緑色はペニシリウム・ロックフォルティというカビです。
アオカビは乳脂肪をエサとし、特徴的な風味化合物を生成します。
スターター菌(チーズ作りの最初の段階で導入する菌)も同様に、脂肪や糖、タンパク質を食べて風味を生み出します。
世界には1700種類以上のチーズがあり、味や香りは驚くほど多様です。
クリームのようなブリー(ドイツ)、バターのようなゴーダ(オランダ)、砕けやすいパルメザン(イタリア)、コクのあるチェダー(イギリス)、マイルドな味のパニール(インド)などは無数にあるチーズの一部で、他にも“くさい”と言われている種類は、マンステール(フランス)、リンバーガー(ベルギー)、スティルトン(イギリス)、そして、ロックフォール(フランス)があります。
チーズの主役は微生物で、細菌やカビ、酵母など、何百種類もの強者たちです。
微生物は脂肪やタンパク質、ラクトース(二糖類の低甘味度甘味料)を消化することで、さまざまな風味豊かな分子を放出します。
いい例えではないですが、マンステールとリンバーガーは「古い靴下」のようなにおいがしますが、これはブレビバクテリウム属の細菌からくるものです。
でも、においが強烈なチーズほどワインとは相性が良くて、ワインを飲みながら「くさ美味い!」「くさ美味い!」と連呼しながら私は食べています!(笑)