木樽熟成ワインの特徴

「樽熟成とステンレスタンクでのワインの熟成の違い」という以前の回で、ステンレスタンクの場合、空気を通さず、機械による細やかな温度管理などが可能で、ブドウ由来の味を表現しやすく、かつコスト面でも優れていると解説させて頂きましたが、今回は、木樽で熟成させたワインについて、一歩踏み込んでみたいと思います。

木樽による熟成は、厚みのある味わいや複雑な風味やまろみを得る効果がありますが、木樽の熟成に関する香りは、「木樽の元々の香り成分」、「樽の内側を熱処理したことで得られる香り」、「酸素が触れることによって起こる化学反応」の主に３つに起因します。

聞きなれないカタカナも多く、途中で投げ出したくなると思いますが、最後にまとめがありますので、ザッと「こんな感じなんだ」と目を通して頂くと、ワイン中級者といっても過言ではありませんので、ぜひ我慢してお読み下さい。（笑）

まず、ひとつ目の「木樽に直接由来する香り」成分ですが、『バニリン』、『オイゲノール』、『ラクトン』、『グアイアコール』の主に４つで、『バニリン』は、言葉通りのバニラの香りなのでイメージがしやすいと思います。

次の『オイゲノール』は、スパイスの香りで、クローブ（丁子）やローリエ、シナモンなどの刺激のある快いハーブの香り。

『ラクトン』は、ウッディーでほんのり甘い香りのココナッツやアンズや桃などの果物、ジャスミンなどの花、バターなどの乳製品、そして、麝香（じゃこう）と言われる超高級ワインに感じることがある動物性の芳香成分です。

そして、『グアイアコール』は、スモーキーフレーバーで、歯科医療で局所麻酔としても使用されているため、歯医者さんの香りのイメージでもあります。

２つ目の「樽の内側を熱処理したことで得られる香り」は、いわゆるロースト香で、まっすぐな木材を樽状にするために木の表面を焼きながら曲げることに由来していて、この火入れ具合が強くなると、木の成分の溶け出し具合が増加して、より深みのあるトースト香を感じます。
焼き入れの軽い順に「バニラ」（もともとの木由来の香り）→「トースト」→「モカ」→「焙煎したコーヒー豆」→「燻煙」といった具合になります。

そして、３つ目の「酸素が触れることによって起こる化学反応」ですが、酸素が触れることによって起こる化学反応での熟成です。
樽は、一見すると木目が隙間なく並んでいるように見えますが、木は切られた後も呼吸するため、木目から酸素が入り込みます。

一般的には、新樽比率が高いとワインにしっかりと樽香がつき、一度ワインの熟成に使用した古樽を多く使うと繊細な樽のニュアンスを出すことができると言われています。

ここまでご紹介した香りは、単体で強く感じるとクセとしてネガティブな印象に感じてしまう方も多いと思いますが、料理やお酒のアクセントとしてはとても重要な効果を発揮してくれます。

ワインの解説やコメントで、「ナッツのような」、「バターのような」、「バニラのような」、「スパイスのような」などの表現は、木樽で熟成されたリッチな風味のワインである可能性は高いですが、中には偽物も存在しますので、そのお話は次の機会でご紹介させて下さい。