『最も新しい州』 ~イタリア紀行10~
Le Club de Tokyo ソムリエ 泉澤 進也
こんにちは。ル・クラブ・ドゥ・トウキョウ、ソムリエの泉澤です。
今回ご紹介はモリーゼ州。
前回のアブルッツォ州から1964年に分割されたイタリアのふくらはぎ辺りにある誕生して50年余りのイタリアで最も新しい州です。
もともとがアブルッツォ州と一緒なので食文化もワインも、多少の違いがあれどとても似ています。
当時あまり興味がなく通りすぎるだけの予定でしたので、わたしが訪れた街は大きく分けると2ヵ所だけですが素敵な経験でした。
1つ目の街はキラキラと輝く海沿いの街「テルモリ」。
港街ですのでアブルッツォ同様にトラボッコがあり、魚介類が美味しい!
テルモリでは海側の旧市街の散歩がオススメです。
観光としては世界一細い路地として案内されている「レジェチェッレ」。壁に矢印などがあるのですぐに見つけられます。
海沿いの小さな城・ズヴェーヴォは歴史を感じる重厚な造りで近くまでは行けるが中には入れませんでしたが、旧市街ではあちこちの家の窓や玄関などに花が飾られていてとても優しい雰囲気がいい感じ。
ただ、観光地ではないためかレストランがなかなか開かなくて、早くても20時くらいになってやっと入れるくらいで、もっと遅いお店もありました。
たまたま入ったレストランでは前菜の魚介盛りを生か加熱か聞かれましたが、あまり生の魚介を食べる機会もなかったので生を頼みましたが本当に新鮮で美味しい!
カチョカヴァロというひょうたん型のチーズやカヴァテッリというショートパスタはつまみにいいし、魚介の出汁だけのシンプルなパスタ、魚介がたっぷり入ったスープやパンパネッラという豚肉の唐辛子焼きも美味しく楽しい夜でした。
モリーゼのワインは白ワインですと、ペコリーノ種、パッセリーナ種、ボンビーノ種。
赤ワインですと、ティンティリア種、モンテプルチアーノ種、アリアニコ種。
この辺りが主要品種になります。
ここで飲んだデカンタに入って出てきたので名前もわからない白ワインが美味しかった!
このレストランは地元で人気の店だったみたいでかなり遅くまで賑わっていました。
近くの新しいワイナリーを教えてもらったので翌日寄ることになりました。
朝、ホテルでクロワッサンとカフェ、お土産にペパテッリという黒胡椒とはちみつのビスコッティを渡され出発。
サンマルティーノインペンシリスという街の海が見える丘の上にあるワイナリー、「カタッボ」へ。
もともとヒマワリの栽培者でしたが、夢を叶えて家族経営のワイナリーをスタート。
当時、まだ10年も経っていなかったのでほんとに出来たばかりのワイナリーのため訪問者もいなければ、日本人なんて来るわけもなくとても歓迎されました。
当時ほぼ無名のティンティリア種(イタリア語で染み)というモリーゼの土着品種から造られる赤ワインを広めたいと熱心に説明されていました。
18世紀にスペインから伝わったとされる黒ブドウで、不思議なことにモリーゼ州だけで栽培されています。
ティンティリアという名前の由来はスペイン語で赤を意味するティント(tinto)からきており、このブドウから造られるワインが深い赤色をしていることが由来します。タンニン豊かで、スパイシー、少しハーブを感じさせる魅力的なワインは明確な個性的で、栽培面積はまだまだ少ないものの、今ではモリーゼ州を代表するワインに成長しています。(2011年にD.O.C.に昇格)
せっかくなのでパンパネッラ発祥の地であるこの街で軽く食事。
カタッボに紹介されたお店に寄り、誰が頼んだのかわかりませんが2度と見ることもないであろう料理との出会いもありました。
豚の皮のトマト煮込みがどーん!豚の耳のトマト煮込みがでろーん!と、見た目はそんな悪くもないのですがなかなかな迫力で、コラーゲンたっぷりのかなりのボリュームで食べきれないほどでした。
それにしても観光客に会わない土地でしたね。(笑)