THE SUITE
ソムリエ
鈴木 昌武
こんにちは。THE SUITEの鈴木です。
2012年、全米を揺るがせた偽造ワインによる史上空前の詐欺「ルディ事件」が発生しました。
犯人はルディ・クルニアワンという中国系インドネシア人。
2002年、ルディは25歳の若さで、突如ロサンゼルスのワイン社交界に登場し、ハリウッドの映画監督や大富豪たちと人脈を築いたあと、ワインオークションにも参加するようになり、多くのオークションハウスからプレオークションディナーというオークション前日の招待客向けに高級ワインが多く振る舞われるディナーなどにも招待されていたので、本物の味をよく分かっていたようです。
ワインに関する知識、鑑識眼がずば抜けていて、ワインに使うお金は毎月100万ドル。
特にロマネ・コンティの味を飲み分ける能力は天才的で「ドクター・コンティ」とあだ名されていました。
次々に高額ワインを落札・出品を繰り返し、有名ワインコレクターとしてワイン社交界でも名を馳せていましたが、偽造の疑いが発覚したのは、ブルゴーニュの生産者ドメーヌ・ポンソのワインがきっかけです。ポンソの「クロ・サン・ドニ」1945年~71年を出品したルディに対し、ポンソの当主が「1982年がファースト・ヴィンテージで、出品されたヴィンテージは存在しない」と申告。その後、ルディのワインを落札したアメリカの大富豪が、ワインの真贋に対して訴えを起こし、FBIの調査により偽造が発覚しました。
この事件の被害総額は120億円といわれ、今なお偽造ワインは回収しきれずに市場に出回っているといわれていますので、ネットで高額ワインの購入を検討している方はくれぐれもご注意を!!
さて、そんなルディの偽造ワインの中身は、チリやカリフォルニアワインにポートワインをブレンドしたり、ハーブや醤油で味を調え、澱に見せかけコーヒーの粉を封入したりと、工夫を凝らして本物に似せたそうです。
ワインに醤油!?と驚かれるかもしれませんが、醤油はその発酵過程において、麹菌が大豆のタンパク質をアミノ酸(グルタミン酸など)に分解し「旨み」を、乳酸菌が糖分から有機酸を作り「酸味と伸びのある味わい」をもたらします。さらに、酵母菌が糖分からアルコールを生成、造られた有機酸と反応し、醤油特有の「香ばしく奥ゆかしい香り」が生まれます。
この旨みと相性が良いのが、丸さ、なめらかさ、おだやかな旨みが特徴の冷涼産地のピノ・ノワール種の赤ワイン。
フランス・ブルゴーニュやドイツ産のピノ・ノワールは、やや軽めの味わいで、渋みがそれほど主張しない分、酸味がしっかりとしており、醤油の風味に最も適しています。
醤油ベースの煮物やすき焼き、そして赤酢で握られたマグロやカツオ、ウニ、アナゴ、かんぴょう巻きなどもかなりおススメです。
これらの組み合わせは皆さんもダマされたと思って、ぜひ挑戦してみてください!(笑)