ROPPONGI CLUB CHICK
ソムリエ
山之内 克哉
残暑見舞い申し上げます。
「六本木クラブチック」の山之内です。
今年の夏は平年に比べて厳しい暑さが続き、皆さまにおかれましても何かとご体調に気を遣われる日々だったのではないでしょうか。
ようやく9月を迎え、朝夕にはかすかに秋の気配も感じられるようになってまいりましたが、まだしばらくは残暑が続きそうですね。。。
どうぞお健やかにお過ごしくださいますよう、心よりお祈り申し上げます。
そして、日頃より当店をご愛顧いただき誠にありがとうございます。
さて、厳しい暑さと戦っているのは日本だけではないそうです。
ワインにおいて、当店でも取り扱いの多い産地であるフランスでは、2025年6月1日から8月17日は観測史上3番目の暑さとなりました。
北半分(ロワール、ブルゴーニュなど)では温暖化により、生産量は総じて上向きのようです。
暑いとブドウは糖度が高まりアルコール度数も自然と上がります。かつて必要だった補糖が不要なほど成熟が良好で甘く、品質向上が起きやすくなっています。
これには芽吹きから開花、成熟までのサイクルが一気に進むことが起因しています。早まった成熟サイクルを「早摘み」で帳尻を合わせます。ナント地球温暖化が加速した1988年以降、平均で16日も収穫が前倒しになっているようなんです。
一方で南仏では状況が厳しく、アルコール度数は30年前の11.8度から14度前後へ。酸は下がり、味わいは重くなりがちです。消費者が求める“軽やかでフレッシュ”なトレンドと逆行しています。
畑で働く人も苦労が絶えないようです。
収穫のピークが真夏に移動したため、炎天下での長時間労働が常態化しているのです。現場では、早朝や夜間収穫、送風機、可搬式シェード、ミスト散布などの工夫でなんとか人を守ろうとしています。
ブドウ栽培は猛暑に極めて弱い職業で、建設業に次ぐレベルで熱ストレスの影響を受けると指摘されます。
熱中症・脱水・睡眠不足・精神的負担が重なり、収穫の早まりで真夏の長期労働”が常態化しているのが実情です。
温暖化は、ワイン産地を北へと押し上げています。
好都合と不都合になったエリアが存在するわけですが、どの場所においても環境変化に適応したワイン造りが肝となってくるわけですね。
私たちはこの汗と努力の結晶であるワインを、一本一本はおろか、一杯一杯を大切に頂かないといけないわけですね。
最後に、最近当店にて仕入れましたワインを1本ご紹介です。
Le Clarence de Haut-Brion
ル・クラレンス・デュ・オーブリオン
1855年のメドックの格付けでメドック格付け1級の五大シャトーのなかで唯一、メドック外にも関わらずグラーヴ地区から選ばれたシャトー・オー・ブリオンのセカンドワイン。
ファーストとの違いは樹齢。ブドウの樹は、樹齢が高いほうが深みのある美味しいブドウが生まれます。若い木から採ったとはいえ、やはり1級シャトーのワインと同じ畑。十分な魅力を秘めています。
プラムや赤スグリ、ブルーベリーなどのいきいきとした果実に加えてリコリスやオリーブ、僅かにメントールの涼やかな香りも。ジューシーな果実味をしっかりとした骨格が支え、充実した味わいです。