映画の中のワイン・第８６章

映画『ドライブ・マイ・カー』を観ました。昨年観ていたのですが、何回観てもいい映画です。
最初観た時は、ここ数年で私にとってベスト５に入るぐらいの名作だと思っていましたが、全米映画批評家協会の第56回同協会賞で作品、監督、脚本、主演男優賞を始め、いろいろな賞を受賞し、アメリカ・アカデミー賞の前哨戦としても位置付けられるゴールデン・グローブ賞で非英語映画賞（旧、外国語映画賞）も受賞しました。
日本映画の受賞は市村崑監督の『鍵』以来、62年ぶりの快挙です。
主演の西島秀俊はアジア人初の主演男優賞が与えられました。

この作品は村上春樹の短編小説が原作で、西島秀俊が演じる妻を亡くした舞台俳優で演出家が演劇祭で演出を担当するため、愛車で訪れた広島で三浦透子演じる専属運転手の女性と出会い、それまで目を背けていた悲しみ、喪失感を見つめ直していく姿を描くストーリーです。

ヒロインの三浦透子は『ロマンスドール』『おらおらでひとりいぐも』の演技に加えて、『天気の子』の主題歌を歌ったことで人気急上昇中の女優・アーティストです。
作品は2時間59分と長いのですが、それを感じさせないぐらい、グイグイと引っ張られてしまい、最後は余韻が残るフランス映画のようでした。
濱口竜介監督の代表作になる事は間違いないですね。

さて、ワインの話になりますが、この映画にワインがアイテムとしては出てきません。そもそもワインがキーポイントとして物語が進む映画ではないからです。
ですが、この映画は“ムルソー・プルミエ・クリュ”だと思いました。

複雑な香りで余韻が長い、映画も複雑な脚本で観た後の余韻が長い、ムルソー3大プルミエ・クリュの“ジュヌヴリエール”感があります。
ふっくらとした丸みに、このクリマの特徴である素晴らしいフィネスが複雑に重なっています。
このワインはぜひクラブチックで美女と一緒に飲んでいただきたい一品です。（笑）